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40. 海の小箱(1/2) [ことば・映像・音・食べ物etc.]

 いきなりですが謝ります。

前回の『39. ジョゼ?』ですが、映画観てないヒトにはチンプンカンプンなエンディングでした。スミマセン。

 ちなみに話はいきなり変わりますがー『22. 観れずに逝けるか』はあまりに大袈裟過ぎて(苦笑)あれから何作かの映画について書きかけたのですが、“ストーリーを種明かしせず、本当に自分が素敵だと思う作品を自分なりの視点で語る” 難しさに...つまりはギブアップしてしまいました! “企画倒れ” とはこの事です。まあ、これがザ・ワタシなのです。倒れてまーす。(赤面&蒼白)

 だから今後は、こうして気分に任せて無計画に出してゆこうと思っています。

既に『ポロック』等、何作かのタイトル等は、過去のブログ内で “ものの喩え” として挙げてきましたが、”紹介” だと意識して書くのは2回目かと思います。たしか過去にベンエーグ・ラッタナルアーン監督/浅野忠信主演『インビジブル・ウェーブ』を、軽く取り挙げた記憶があります。

 実の処、多くの方が名作とする作品や、賞を一杯獲得して興行的にも大成功していて、みんなが知っていそうな超有名作品を、ここでわざわざ挙げたところで、全然楽しくないかな〜と考えていました。どこか観るヒトに依って好き嫌いが別れるような作品がいいかな...それでいて、ハリウッド的に大金や最新の技術をつぎ込んでいない作品、少なからず絵(色とか光とか構図とか編集)が味わい深い作品を紹介出来たらなあ〜と思っていました。

 たしかに『ゴッドファーザーPART2』や『明日に向かって撃て』や『ディア・ハンター』は、何回観ても感銘を受けます。この時代このチャンスにキラ星の如く結集した才能たちが、激しくぶつかり合って融合して、見事に昇華されています。まるで魔法にかけられた様に、いつの間にかワタシは画面の中に入り込んでしまいます。

 『ミツバチのささやき』や『小さな恋のメロディ』『』『生きる』も大好きな映画です。

ビィム・ベンダースやジム・ジャームッシュやアキ・カウリスマキ、スタンリー・キューブリックの監督作もかなり好きです。『パリ・テキサス』『アメリカの友人』と『デッドマン』は、自分の中でかなり特別な一本でもあります。時間を作って心して観る感じです。

 コリン・ナトリー監督『太陽の誘い』はスェーデンの映画です。ロバート・レッドフォードが監督した作品もそれぞれ胸に染みますが、中でも『リバー・ランズ・スルー・イット』が一番かな。この話の中で弟役のブラピの彷徨える魂には痛く共感してしまいます。釣りの場面も盛り沢山で、風景描写は抜群です。時代考証もソツなくて、隠れた名作といっても過言ではないでしょう。この2本もそれぞれ自分にとっては特別な映画です。似た光(自然光&人物からの)を感じます。その “光” をたしかに自分も知っていて、あまりにリアルに感じるものだから... きっとこの辺りの作品を共感出来るヒトとは仲良くなってしまうと思います。

 画家ジュリアン・シュナーベルが監督した映画は総て好きですね。取り上げるテーマも毎回独自で、映像美や構図も、この画家ならではの味わい深いものです。若き日の監督自身と友好のあった夭折の画家ジャン・ミッシェル・バスキアを描いた『バスキア』は愛に溢れています。たしかゲイリー・オールドマン演じる役が若き日の監督自身です。

或る意味カルトの中ではデビッド・リンチ監督『ワイルド・アット・ハート』の苦笑してしまう程の熱い愛と、アレハンドロ・ホドロフスキー監督の『エル・トポ』の象徴性がかなり好きですね。

 ギリシャのテオ・アンゲロプロスとフランスのトニー・ガトリフ(アルジェリア出身)作品も総て大好きです。 未だ彷徨っている中年男子には、前者の『蜂の旅人』をお勧めします。或る意味で厳しくも美しい ”踏み絵“ の様な映画です。過去を捨てて旅だった者の末路、哀しい響きがそこに在ります。アンゲロプロスはカメラの長回しが知られていますが、ワタシは何よりも象徴的な構図(役者の配置も風景も)と色彩に魅せられます。『シテール島への船出』他、まるで動く極上の絵画の様です。この監督による作品は極端に台詞が少ない故、上映時間もかなり長目です。景色や事象で伝えようとしています。必ず説明が入りながらどんどん展開してしまう様な、豪華なハリウッド映画が好きなヒトにはオススメ出来ないかも知れません。

 後者ガトリフの作品は、ジプシー/ロマ/サンカというコトバにピンと来ちゃうヒトなら、そして音楽が好きなヒトなら是非ともオススメです!元来ヒッピー精神が宿ってしまっているヒトにもオススメですね。派手なストーリーは決してありませんが、タマシイに焦点をあてた映画っていうか...きっと、胸の中が静かに温まるかも知れません。独特な手法なので、一本目は『僕のスウィング』が一番観やすいかも知れません。『モンド』は以前、娘と二人で何度も観ました。ワタシが「モンドでも観ようかな」と言うと「観る観る観る〜!」と飛んで来たものです。娘も大好きだと言っていましたね。この映画はまったく説明がありません。絵と音だけで編んだ話です。内容的には、不自由無く恵まれて育ったヒトが観たならば、もしかすると物足りないかも知れません。原作のル・クレジオの小説も素敵でした。ワタシは性格的には短編集を好むのですが、とにかく凄い作家だと思います。



 俳優ですがー 男ならマルチェロ・マストロヤンニ、歳食ってからのハリー・ディーン・スタントンとクリント・イーストウッド、初期ロバート・デ・ニーロ、ジャック・ニコルソンは大好きですね。本人自体の闇が必ず滲み出ちゃう点では、有名どころでは彼等は唯一無二の存在ですね。躍進目覚しいベニチオ・デル・トロやブラッド・ピットも好きです。二人とも主役級で有名ですが、彼等はデビュー初期から素晴らしい脇役を演じていました。

 エド・ハリスとジョン・タートゥーロもかなり好きですね。前者の実は不器用さと、後者の怪優ぶりが好きです。

 サスペンスタッチでストーリーは単純、デニス・ホッパーとジョン・タートゥーロという全く違う意味での怪優二人が見ものでもあり、ジョディ・フォスターが(出演作の中でもきっと一番)妖しく美しく演出されているアラン・スミシー監督(これがなんとデニス・ホッパー)作『ハートに火をつけて』(当然The Doorsの同名曲から戴いたのでしょう)と云う作品があります。これはB級映画の上の上(日本酒に喩えたらば2級の辛口?)が趣味ならオススメですよ。ちらりとボッスの絵画が効果的に写し出されたりします。或る意味、男の夢想実現!みたいな話なので、頭の固い女性は嫌がるかも知れませんが、ワタシはかなり浸れます。そう云えばこの話の中で神様ボブ・ディランが、なんと前衛芸術家の役でチェンソーを使っていて、かなり笑えました。余談ですが、この映画は製作会社の勝手な大幅編集に憤慨したデニス・ホッパーが名義を拒否したそうで、後に『BACKTRACK』という改題で彼の思い通りの編集版が本人名義で発表されたのです。理想のカタチを創る為にはそれなりの試練があるのですね。両方観た上では、後者の方が細やかな精神描写が成され、音楽まで変わっていてオススメなのですが、あいにくレンタルショップではなかなか見かけません。

 怪優と言ったら怒られてしまうかも知れませんが、ジャン=ピエール・ジュネ&マルク・キャロ監督作『ロスト・チルドレン』のロン・パールマン、俳優としてのトム・ウェイツもかなり好きです。この系統の顔とスタイル、そして何より声に弱いのかな? 怪優部門は語り出すと切りがなくなるので、この辺りで止めます。

 邦人男優なら、笠智衆、殿山泰司、原田芳雄、浅野忠信が好きです。結局ワタシは国内外問わず “何に出て来てもそのヒトに成っちゃう” 感じの、いわゆる “結局は不器用かも?” 的な役者を好きになってしまうのかも知れません。邦画部門、特にATG系の作品と寺山修司の世界は語り出したら止まらないので今回は割愛します。


 女優ですがー アマンダ・プラマーやマーシャ・ゲイ・ハーデン、キャサリン・キーナー。どんな役を演じても好きですし、素敵です。マーシャですが、リー・デビッド・ズロートフ監督『この森で、天使はバスを降りた』での内向的な役柄の彼女と、前述エド・ハリスが監督&主演した『ポロック』に於いて主人公を支える女流画家を演じる彼女、そして名優ショーン・ペンが監督した『INTO THE WILD』での母親役の彼女は、先ず同一人物とは思えません。けれども、やっぱり彼女は彼女なんですね。上手くは言い表せないのですが、とにかく素晴らしい役者だと思います。この3人は名脇役でもあり、主役もこなせる。とても美しい女優だと思います。いわゆる男からの視線を集める為の薄っぺらい仮面美ではなく、内側から滲み出てくる強さと哀しさを感じます。ソコに本当の美しさを感じます。共に唯一無二の存在で、今後の映画界に於いても必ず特徴ある役をつかむでしょう。

 邦人なら大楠(安田)道代。岸田今日子と石田えりも好きです。若手なら蒼井優や市川実和子・実日子の姉妹もかなり好きです。皆、芸達者ですが、やはり ”どんな映画に出て来てもそのヒトに成っちゃう" タイプではないでしょうか。

 余談ですが、好きな女性の好みとしても鈴木清順の作品『ツィゴイゼルワイゼン』や『陽炎座』に於ける大楠道代の美しさは脳裏から離れません。荒戸源次郎監督『赤目四十八滝心中未遂』(車谷長吉原作)での焼き鳥屋の女主人役の彼女も最高です。尼崎のドヤ街の女のイキザマを目線だけで見事に演じています。歳を重ねても、貧しい静かな役でも、妖しく哀しく美しいヒトは、やはり妖しく哀しく美しく、なーんにも変わらないのですね。こんな瞳のヒトは、きっと心根が優し過ぎるが故に激しいジンセイを歩んで来たんだろうなあ、とついつい騙されます。彼女の魅力は、我が国の男たちが作り上げた馬鹿げたロリコン趣味に便乗してしまうアイドル女優や歌手の、乳ばかり発達した軽薄な美とはまるで違うのです。やっぱり、奥の方の芯から滲み出てくる美なのです。そりゃ、あくまで「アンタの趣味の問題!」と言われてしまえば、それまでの話ですが。(苦笑)

 この様にワタシは、まるで節操がないヒトなのです。でもホラーとスプラッタだけはもう観ないと思います。現実の方がよっぽど生々しく恐ろしいことを、既に知ってしまいましたから。もし血の演出で挙げるなら、市川崑の映像手法が好きです。血糊を魅せたくて仕方無い様な映画を観る時間があるならば、過去に娘と観た『ホワイト・ファング』や『小熊物語』等の動物が主人公の映画をもう一度観るでしょう。そのような映画はどうしても所々にわざとらしさが在るのは否めなくても、ニンゲン様が一番じゃない事を確かに教えてくれます。時にはそんな映画も良いものです。


 アニメは殆ど観ませんが、やはり娘の影響で宮崎アニメは大体観て来ました。『天空の城ラピュタ』にしろ『となりのトトロ』にしろ『千と千尋の神隠し』にしろ、どんなに話の舞台が変わっても彼の作る作品世界の根源は、きっとテレビ時代に関わった『未来少年コナン』や映画原作1作目の『風の谷のナウシカ』に総てある訳で、既にそこで完成されていたとさえ思います。だから何処かしらシリーズものに感じられてしまうのですが、その中でも『もののけ姫』は何故か好きなのでした。彼の映画の中で好きな二人はナウシカとサンですね。儚く、強いです。あ、みんなそうか! 映画のラストに人間が吐く最後の台詞に於いて、ジコ坊(大事な脇役)に「馬鹿には勝てん」とか言わせてしまう辺り「要らないのになあ」と思うのですが、監督はどうしてもその台詞を入れたかったのでしょうね。“馬と鹿=けものたち” という意味で。

でもワタシは其所が、日本のアニメが絵の技術が高くてもレベルが低い原因だと思ったりするのです。どうしても台詞で “説明” してしまう。映画には、せっかく絵や音があるのに。それは興行収入を課せられているからでしょうか? 子供が観るからでしょうか?

 観客の質を恐がり、即座の反応を求めるあまりに、怖がって手っ取り早い “説明” に逃げるよリ、先ず創り手側が勇気を持たなければー作品自体の、強いては双方の、つまりはこの国の文化レベルはいつまで経っても変わらないのではないでしょうか?(まあ「”文化” って何?」って問題も「変われば良いってもんじゃない」って問題もありますが...)(あと...コノ話は映画に留まる問題じゃないとも常々思うのです。)

 ワタシはきっと底に流れる(説明されない)何かが、観終わった後も胸の中に居座ってしまう様な映像や、ドキュメントタッチ(虚構であっても)の両極か、その両方の複合かが割と好みなのかも知れません。中途半端な "手抜き作品" だけは御免です。次の作品への資金稼ぎの為の "こなし作品” なんか観たくありません。時間の無駄です。散歩するか、酒でも呑んでた方がマシです。ですが...唯一映画のシリーズもの(踏襲)で許せる作品があります。『男はつらいよ』です!寅さんだけは、やっぱり何だか特別なんですね。彼が亡くなった直後のNHKの特番を観て泣きました。渥美清は寅さんから逃れられなくて、そんなに辛かったのか、と。その時は結婚していたのですが、横に居た元妻もおいおい泣いていましたね。寅さん死んで夫婦で泣いて...(笑) ワタシにもそんな時代があったんですねえ〜(しみじみ)


 映画はかけている金の問題じゃないと思うのです。大事件を起こしたり、必ず爆破しなくたっていいと思うんです。(笑)だって河瀬直美作品なんて、きっと超低予算ですよ。なのに、『ウガリの森』(漢字が見つかりません)『萌の朱雀』や、どれも素晴らしいじゃないですか!カメラがぶれてようが映像や音声が悪かろうが(必ず粗探しを書き綴るバカ評論家は居るもんだね)んなもん超えて創り手の伝えたいものが、創り手の熱が、こっちにジワジワ染みて来るってもんです。

 

 ワタシにとっていい作品とはそんな基準かも知れません。まあ “金に換算出来ない価値” とは映画に限った話じゃありませんよね。


ー#2へつづくー


      

           

                                              (只今の脳内ミュージック/Norah Jones " Thinking About You"

ジュディット・ヴィッテ&ロン・パールマン.jpg



 







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