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43. 散歩の橋 [日々雑感『本日もまた混沌と』]

今、散歩から帰って来た。ほんの25分位の散歩。
寝付けなくて、ふと歩きたくなった。
最近は用事で遠出しない日は2キロ程散歩している。
きっかけは瑠璃子さんのブログ日記『ごきげんいかがワン・ツー・スリー』の“長距離走者の至福”を読んで、素直に感化されたからでもある。
体重が増えるとその分だけ確実に、痛めた腰や膝への負担も大きくなると解っているので予防も兼ねて。
そしてこの苦手な季節からの気分転換が一番の理由だ。
ついこの間まで、否、過去のジンセイであれ程ジョギングやウォーキングを馬鹿にして、というか試みる気持ちが湧かなかったのに...
兎にも角にも、とりあえずワタシは始めた。
初めて11日程。ははは。未だそんなもの。
一回さぼって、一回大雨で中止。だから未だ9回程しかしていない。一体いつまで続くだろうか?
何に関しても、もう気負えないワタシみたいだから、コレも又さぼったり復活したりだろうな...
「コレデイイノダ〜!」
いずれにしてもこれはウォーキングでもジョギングでもない訳で。あくまで “散歩” である。
時に早足、時に蝸牛の歩。自由な、あくまで “散歩” って訳で。ここ無駄にこだわります!(馬鹿だねワタシ)

身体の気付かぬ冷えは “万病の元” と痛い程知っているので、未だ機械に依る除湿も我慢しているのだがー 
全くこの部屋は袋小路の一階角部屋だからこんな夜は風が抜けない。窓はトイレ含め5つも在るのに、立地条件で、風通りが悪いのだ。風通りが悪いから窓を増やしたのか?まあ、どっちでもいいか?否、そうに決まっている。
このアパートは大工でもある近所に住む大家が自ら建てたそうだから。ちゃんと考えて建てたのだ。
一般的に最近の建築ではこの構造でこんなに窓は増やさない。防犯の問題ももあるし、阪神淡路大震災以降はとにかく一般住宅の建築基準は地震対策を一番に考える様になっている訳だから。
このアパートかなり古いしね。まあ、だから住んだのだけど。だってその分だけ広くて安いし。そんでもって窓が多い!(笑)まあ、30年位前に、大家が丁寧に自由に作ったんだな。今時見かけないもん、こんなへんな間取りのアパート。


とにかくこんな夜は歩いて歩いて汗をかき、あとでサッと温いシャワーでも浴びて一杯あおって寝ちまうしか道はない。ワタシはそう思って夜の散歩に出た。

お気に入りのコースは大した事は無い。少しでも植物等を身近に感じられる、住宅街と街道を混ぜた2キロ位。
先ず、閑静な住宅街を折れ曲がって一端広いK街道に出て、いつだって何となく排気ガスに息を潜める様にして、あとはM通りを北上するのだが、その途中でT上線の線路を跨ぐカタチで "大きな橋の様な景色" に差しかかる。
ワタシはそこが何となく好きなので今日もしばし足を停めた。
都心部へは線路はカーブを描き、両サイドの際までびっしり建ち並んだ住宅の壁もカーブを描き、よって遠くの景色は望めない。反対側は方角としては西北となるのだろうか、秩父方面へ向かう線路は結構真っすぐ伸びているので、遠くの景色が望める。空気の澄んだ寒い季節は、かすかに遠くの山並みも見える様な気がした。
橋状の街道の終わる所、その付け根には樹齢何十年だろうか、割と立派なソメイヨシノと深紅の八重桜が生えていて、今年もちゃんと時期をずらして咲き誇っていた。
毎春ここで一服灯けながら軽く花見とばかりに見上げていた際に、ニンゲンにすれ違った記憶はあまりない。それだけワタシが夢中に桜に見惚れていた訳ではなく、この街道のバイパスの様な迂回路が橋の下方にあり、車の通りはそちらの方が少ないものだから、大体のヒトがそっちの道を歩くのだった。
ここでの花見はいつだって特等席、独占権は無料。唯、車道を行き交う車の排気ガスだけが難点ではあったが。

先程、そのお気に入り場所から静かな風景を見ていた。
山側へ2本の線路がずーっと伸びていて、夜の闇に(遠近法でいう処の)消失点は紛れ込んでいた。
もう終電も過ぎた筈なのに、遠くで幾本かの信号機だろうか、赤いランプが光っているのが見えた。背中側の車道を、タクシーが2台続けてT平方面へ通り過ぎた。
ふと斜め下、前方距離にして20メートル程先に、何かが線路上で動くのが見えた。
眼鏡はしていなかったので、0.6程度の視力で懸命に焦点を合わすと、それは白っぽい痩せた猫で。
いつ何処から渡ってきたのか、奴は下り側の2本の線路の真ん中で自分の背中を見返す姿勢で、一生懸命に舌で毛繕いしている様子だった。ノミでもいて痒いのか、がぶがぶと噛むような動作もしていた。
聴こえないかとも思ったが、癖でつい口をつぼめて「テュッ×3」と舌を鳴らして合図を送ると、奴は直ぐに気がついてしばし毛繕いを中断しコチラをじっと眺めていた。
橋の上のワタシと線路上の白猫は、時間にしたらほんの10秒程だろうか。お互いに黙って見つめ合っていた。
見つめ合っていたら、何処かからヒトの声が聴こえて来た。
何処かの家の男女が大声で言い争いを始めたらしい。と同時にN駅方面から、酔っぱらいがいい気分で歌う「川の流れの様に〜♬」も聴こえてきた。
目線を外した隙に、線路の上から白猫は居なくなっていた。
急いで辺りを見渡すと、白猫がゆっくりと左側の住宅の壁の抜け道に消えてゆくのが、左目の視界の端辺りに見てとれた。

仕方無いからワタシも帰る事にした。
かいた汗は、殆ど乾いていた。
相変わらず風は無く空気は淀んだままで、でも多少気温が下がった様な気がした。
アパートに着き玄関を開けると、空気がモワッと妙に熱く感じられた。
シャワーを浴びてから、この頁を書き出した。



           (今夜の脳内ミュージック/STEVE EARLE "Taneytown" )

DAVID SYLVIAN ジャケ一部.jpg


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