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67. 路地裏の鯉 [日々雑感『本日もまた混沌と』]

3泊して娘は帰った。
いつも後はへこむ。
楽しかった分の反動って訳じゃないんだ....
でも、今回もまた新たなエネルギーも一杯戴いた。
だけど数日は元気が出ない。どうしても。

いつも新宿からの特急か高速バスで帰るので、新宿は私にとって益々特別な街になってゆく。
見送った直後、ワタシは街を彷徨う。宛ても無くうろつく。
うろつくと言っても、酒場を梯子したり、喧嘩を売って歩き回る訳じゃない。
このまま直ぐに電車に乗って、いつもの駅で降りて、アパートに真っすぐ帰りたくなくて...街をうろつく。
用も無いのに店を覗いたり、ウィンドウショッピングなるものが出来ないのは昔からのこと。だから、ひたすら道を歩く。なんとなく方位を意識しつつ、路地をゆく。
おかしな看板に笑ったり、人の行動を観察したりもしているんだろうけど、そんな時はきっと、何かを見ている様で何も見ていない気もする。
唯、歩くのが目的なのかも知れない。

      *

でも今回は画材屋に寄った。
幾つかの物が足りなくなっていたのを思い出して、世界堂に寄った。
相変わらず店は天に向かって細長く建ち、処狭しと商品がひしめき合い、各フロアーによって店員の雰囲気が違っていて、笑えた。(これは以前、行きつけの店でたまたま元世界堂店員から聴いたのだった。何でもそのフロアーの主任の好みの女子を揃えているらしい。笑える。でも、ありそうな話。)
結局、ジェッソの詰め替え用お得パックと、加筆用マットメディウムと、選びに選んだ筆を2本だけ買った。
娘が上京する際、色んな画材を抱えて持って来てくれたので、これくらいの買い物で済んだのだった。

買った画材を手に、やっぱり一寸街をうろついた。
この街もワタシがティーンエイジャーの頃とは随分変わった。何しろ、道ですれ違う人種が断然増えた。
あの頃に通った喫茶店もライブハウスも安い飯屋も、今はもう無い。
あの頃のワタシは〜大切な事が何にも解ってはいなかった〜なんて風には決して思わない。
唯、解ってはいなかったことも随分あったのに、好きな世界の仲間に対して厳しかった。
他人に厳しいとか、つまりは求め過ぎたり、許せなかったりするのは、きっと...自分が今以上に解っていなかったからだと思う。自分の曖昧さや、あらゆる部分での不確かさみたいなことが。
互いの人生時間の共有を味わうという意識等まるで持てなかった気がする。
だからと云え、今となって何かを「確かに解ってきた」等と言っているのではない。
昔は昔で、否いつだって何かに夢中だったし、真剣に悩んだり迷ったりしながら生きていた。「暇だ〜」なんて思った事は、唯の一度も無かった。
今のワタシだって、後々ふと振り返ったならば、同じ様に思うのかも知れない。

唯、あの頃に娘は居なかったのだ。
この世に存在してはいなかったのだ。
それはアタリマエの事ではあるけれど、何と云うのか...

      *

いずれにしても相変わらず新宿は新宿だ。
どの街にも、その街の何とも言えない匂いがある。その街の音もある。
ヒトにも、何とも言えないそのヒトの匂いがある。そのヒトでしかない声がある。
ソコとの付き合いは理屈抜きっていうのか... 互いの相性と、生きてきた歴史が関わってくる。
「どうしてもあかん」って場合もあるだろうし、何故か成らず親しみを感じる場合もあるだろう。

街が「もう帰りなよ」と言った気がした。
新宿御苑の木々が見える路地裏で一服しながら、そんなことを思ったりした。

        *

今日9日は手術の日だ。身を清めたし(笑)これから出かける。
医者の都合で、正月明けの今日となった。
もうジタバタしても仕方無い。まな板の上の鯉となるしかない。いつだってそうだ。そうなんだ...
でもさ、ワタシは小心者だからさ、実は(睡眠導入剤も飲んだのに)夕べはなかなか寝付けなかったのさ。
やっと寝たのに、夜中に何度も起きてしまい、結局3時間位しか寝ていないのさ。
...参るぜ。

じゃあ鯉になりに行ってくるぜ!
戴いた御守りをポケットに入れてー

                
               (只今の脳内ミュージック/Leonard Cohen "So Long, Marianne"  )



俺たちに明日はない.jpg



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