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69. 温かい釣銭 [日々雑感『本日もまた混沌と』]

本日、手術後3回目の診察。
患部の経過順調。院長先生の小意地悪なジョークも順調。ワタシの御愛想ひきつり笑いも順調。
「家事等で不便で...」と相談したら「そうだね。うんうん、もういいか、いいいい。要らないね。」と、包帯下のクッションの様な(建築断熱材みたいな)綿布は取っ払うことに。
消毒してもらう際に見たらば、縫い跡は17針で、先日より黒ずんでみえた。治ってきている証拠だと思う。
でも予想よりスゴい跡...まだまだ生々しい。なんだか “薄い唇を喋れない様に縫い閉じた” みたいだ。我、少々げんなり気分。
このドバミミズかムカデが引っ付いている様な醜態、いずれもう少しは奇麗になるんだろうか...?という見かけより、前みたいに小指も薬指も器用に使える様になるんだろうか?
今はまだパソコンのマウスを動かすにも難儀しているから、不安を見つめ出すと暗くもなる。

         *

帰路、夕焼けがヤケに奇麗に見えたので歩いて帰った。
アパートから病院まで地図上の直線距離は割と近い。だが、なにしろ交通が不便で、いつも電車やバスを乗り継がなくてはならずかなり面倒なのだった。だから手術前は、天気の良い日には愛用のママチャリでのろのろ通っていた。
途中、帰路に(頂上迄は絶対に自転車で漕いでは上り切れない)急勾配の長〜い坂があるのだが、「な〜に、毎日の事じゃないんだ。味わった方がいいぞ。」とばかりに息を切らせながら漕げる所迄漕いで、ギヴアップ後は自転車を押した。
こんな時、頭の中ではいつもUAの『この坂道の途中で』(映画『空中庭園』挿入曲)がかかっていた。
そして...地方でこんな坂道よりもっと長く、もっとアップダウンの激しい通学路を毎日自転車で何十分もかけて通っている娘を必ず思い出していた。「おかげで脚が太くなって困るんだよね」と言いながら「でもおかげで身体が丈夫になって来たかも。」とも話していた彼女の言葉を思い出していた。

誰でも過去に何気なく聞いた言葉や音楽が、普段は意識下の湖の底に眠っている。絵や風景でも同じ。それが時にふと出逢った景色や出来事と結びついて、デ・ジャブ体験や想像力をかき立ててくれたりする。
それが或る時には色んな感情も呼んだりするだろうけど、また新たな創作欲や発想に繋がることは多いだろう。そうしてエネルギー充電することは、別に旅行や派手な(“遊び”とか言ったりする)行動をしなくても、日常にチャンスは転がっているかも知れない。
誰もが、毎日旅をしているのだからー


今日は綿布クッション?を取ってもらった分だけ、ほんの少し腕が軽くなった気がしていたし、この時期独特の夕陽の赤が誘っていたから、ずっと歩いた。疲れたらバスに乗ればいいし、途中何処でだって座って休めばいいんだし〜と思いながら、てくてくと結局アパートまで歩いた。
切った右腕を真下に下げたり元気よく振れば、とてもじゃないがズキンズキンと痛かったけど、上着のポケットに突っ込んで歩く分には問題なかった。代わりに左腕だけを大きく降っててくてく歩いてみた。(『365歩のマーチ』は唄わなかったけれどね。)
帰宅してから改めて地図を見たらば7-8kmの距離だった。なんてことはないじゃないか...渓流釣りでは、車止めから沢自体の登り下り合わせたらもっと歩いたりする訳だし、旅に出れば “乗り物より徒歩を選んで正解だった経験” は多いのだから。喩え身が疲れても、目や耳や胸の辺りに触れることは断然に多くなるのだから。
でも、こうして街に暮らして電車のダイヤや色んな約束事の中であくせく生きていると、次第にほんの一寸歩く事すら面倒になったり、雨に濡れたり風に吹かれたりがとても大袈裟に感じられてしまう。なんなんだろうね?街に暮らす人のアノ雨に濡れる事を極端に嫌うような感覚は...。併しながらかく言うワタシも(たった3年で)すっかりそっちに順応してきてしまった気がする。
お調子者のワタシは、今日いつになく “歩く選択” をしたーそれだけのことで、こんなことを書いたりして、結局は結構喜んでいるーという訳だ。


でも実際にいい事もあった。一寸得した事。
歩いていたら、大きな某中古品店を見つけて、当然立ち寄った。店の前の駐車場で紙切れが足下に飛ばされて来た。誰かマナーの悪い人が捨てたレシートかな?と思い、一瞬躊躇したが拾ってみた。まあ、何でもよく拾うワタシである。
したらば、その店の今月限り有効の50円割引券だった。あはは...やったね!せこい?いいえいいえ。
周りにそれを落として困っていそうな人も居なかったし、当然喜んでいただきましたよ。ハイ。言わば神の思し召しですからね。病気も、割引券も。(50円だけどね...)
そしてオマケにその店には、お気に入りの監督の一人スパイク・ジョーンズの『ヒューマン・ネイチャー』の中古が “チョイキズ有り。再生に問題無し” の注釈付きで、破格で売り出してた。思わずガッツポーズが出そうなくらい嬉しかったんだけど、怪我してるから小さく「よっしゃあ〜」くらいにした。このDVDは、こんな出逢いを待ってずっと買い控えていた作品の一つだったのです。
当然ワタシ堂々とレジへ。50円割引券と一緒に。(ここでウェディングマーチかけてもいいけど...)
そしたらレジの人、釣銭を渡す際にもう片方の手でワタシの右手をそっと支える様にして、静かに小銭を渡してくれた。掌に落とすんじゃなくて、手渡すっていうか、掌に置くって感じに。(買い物では、つい不自由な右手も使ってしまわざるを得ないんだ。利き手が不自由だと、支払い時の財布の取り扱いはかなりムズカシイんだよね...)
とっさのこうゆう事って教わる事じゃないと思うし。滲み出るね、こうゆうところに人柄が。そいつの人生がさ。

凄く嬉しかった。凄く。温かい釣銭だった。不自由だとさ、余計染みるよ。
ワタシ思わずその人の目を見つめて「ありがとう。」って言っちゃったからね。
照れながらいい笑顔してたよ、その人も。
今回の手術後から何度も買い物してるし、一昨年松葉杖の際を思い出しても同じ。釣銭の渡し方一つとってもホント人夫々だ。買ったモノ以上にとっても温かい気持ちにもしてくれるし、とっても寂しい気持ちにもしてくれる。

でも店員さん、実は...ワタシのあの50円割引券はね...


         *


さっき気が付いたんだけど、敬愛なるマダムギター順さんも、調子悪くてプチ入院してるみたいだ。
敬愛なる鈴木亜紀さんも、おたふく風邪で次のライブを休まざるを得ないみたいだ。
今、どんなにかお客に対しては心苦しく、思い通りにいかないことが歯痒く、内心は切ないことだろう...

お二人とも(これは飾りの台詞じゃなく)心から悪化しないことを祈っています。
そして、それが許されるならば、そんなに急がずとも出来る限りでいいから、ゆっくり養生して下さい。
ジンセイはまだまだ続くのですから。今は休んで下さいね。
ワタシも今、右手の傷をさすりつつ書いています。
独りで居ると、弱っている時は特に辛いよね。
胸の内側はいつだって一つじゃないから、かなり参っちゃう時が、片方の気持ちに包まれそうになっちゃう時があるよね。
でもさ、トラブルも何もかもが経験だと思おうよ。表現者にとっては、きっと...ぜ〜んぶが財産になるよ。
ぶつかった隕石は受け入れて、淡々と行きやしょう!
ワタシは影から、唯、回復を祈ります。
アナタの生き様が滲み出ている音色、メロディー&リズム、声を部屋に流しながら。

     




                       (只今の脳内ミュージック/RON SEXSMITH "April After All" )



N.の撮ったロバ.jpg



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コメント 2

みちこ*

お怪我…じゃなくって、ご病気で?
とにかく、かなり大変だったのですね。
その後、傷の具合は良くなりましたか?

ちょっとした仕草ひとつでも、その人の気持ちや人柄が見えてしまう事ってありますね、良くも悪くも。私も、たくさんの優しい言葉よりも、心に滲みる小さな良い事の方が嬉しいかも。

順さんには先月末に、亜紀さんには今月始めにお会いしましたが、おふたり共バッチリ元気でしたよ。もう、大丈夫そうです!
gemini-goorsさんの傷も早く癒えますように。。。
by みちこ* (2010-02-08 22:06) 

gemini-doors

優しいお気遣いをありがとうございます。
嬉しいです。

えっ!順さんとも、亜紀さんとも、お知り合いなんですか?
そうでしたか〜!!
“バッチリ元気” に復活されていましたか〜
よかったです。

ワタシも、どうにかこうにか頑張ります。
みちこさんも身体大切にして下さい。
by gemini-doors (2010-02-09 09:42) 

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