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73. 上弦のお月さん [日々雑感『本日もまた混沌と』]

眠るのが下手で、その頃になってジタバタする。
身体が疲れていてもいなくてもすんなり眠れなくて困る。意識すればするほど眠れない。
食べるとか寝るとか、ここまで何十年も生きていても、未だそんな毎日のことにジタバタしてしまう。
温かいものを飲んだり、風呂に入るタイミングを変えたり、布団の敷き方を変えたり色んな試みをしてみても、心地良く眠りに入れない質だ。昔っから “そんな感じ” なのだけど、慣れない。
幼い頃に病弱で長いこと寝込んでいたのも関係しているかも知れないーと以前医者に言われたことがある。
20代の頃、昼夜がぐちゃぐちゃな生活を長いこと続けたのが響いているのかも知れないーとも思う。

以前、平均4時間程の睡眠で肉体的にハードな労働に従事していた時は、帰宅後に居間に辿り着く前に台所の床で寝てしまったり、食事中に胃が温まってきて眠くなってしまった。だが、独り身ではそのまま眠りこけてしまった処でドウシヨウモナイ。誰も布団をかけてはくれないし、寝床まで引きずって連れていってはくれない訳で。だから無理にでも起きる。起きて、残りの家事や明日の支度をしてから寝る支度をする。そしてーいざ寝なくてはいけない場になると、何故か神経が冴えてしまいジタバタしていた。
“寝る” ということについての意識が恐怖でさえある。“眠る” のは好きなのに...
もう何年か睡眠導入剤の世話になっているのだが、どんな薬も常用は怖いと思い「なるべく自然に眠りたい」と願うのだが、自然な眠気というものが久しくワカラナイのだ。実を申せば上京以来、ここ数年それがワカラナイのだ。
同じ様な問題を抱えている方にしか、この悩みは理解して貰いにくいんだろうと思う。

        *

今日は日中アチコチに買い出しに出かけたり歩き回ったのに、夜も更けてから “そんな感じ” になってきたので、たった今しがた外を歩いて来た。「歩くしかない!」と天のお告げが聴こえた気がしたような...で、面倒臭がらず着替えて出かけた。温まった際を考えて、一寸薄めの防寒対策で。
住宅街を抜け、大きな公園をぐるりと周り、約3km程歩いて戻って来た。こんな時間帯の “夜の散歩” は久し振りだった。
併し驚いたことに、随分多くの人達にすれ違った。
今日は “日曜の夜” だが、勿論仕事帰りの方も居ただろう。でも一人で散歩している様な方も多かった。
皆、それなりに軽い防寒対策をして黙々と歩いていた。各々の口から吐く息が白く、それが一瞬舞い上がって直ぐ消えるのが見えた。
この時期の夜の公園など人影もないかと思いきや、男のみならず女性の散歩者も居た。「さすが東京だなあ」と思ってしまった田舎者のワタシである。

見上げると半月だった。
丁度真半分ではないけれど、弦の部分が少し緩んだ奇麗な上弦の月だった。
美しく弧を描いた弓の部分は、自ずと足りないもう半分を想像させてくれる。まるで黒い半月がソコに在る様に見えた。

どんなに足りなくても、月はどうしてあんなに美しく見えるんだろうか。
足りないから美しいのか、それとも辺りが暗いからか...
大昔から人々が時に怖れ時に魅せられ、多くの神話や詩に詠い上げられ、親しまれてきた “お月さん”。
数え切れないほどの満ち欠けを繰り返して来た “お月さん” が、今夜は上向きの半分で浮かんでいた。

今宵日曜日の晩、一体どれくらいの人が見上げ、何を思ったのだろうか。
明日の晩、明後日の晩、どれくらいの人が見上げ、何を思うのだろうか。
遠くの山々では、どれくらいの獣たちが、月灯りの下で必死に餌を探すのだろうか。
海原では、何匹の魚たちが跳ねるだろうか。

どれくらい新しい命が産まれ、そして消えるのだろうか。



ジタバタしているのを、
月も黙って視ている。






         (只今の脳内ミュージック/R.E.M. "Man On The Moon" )

満夜/自作木版画(一部).jpg

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